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電子製品のコストダウン手法
日本企業は品質やきめ細かな機能など、コスト以外の部分で勝負をかけますが、それも時間の問題。 すぐに他社に真似をされてしまいます。 日本企業には付加価値とコストの絶妙なバランスが要求されるようになっています。 今回は、電子製品のコストダウン手法を列挙していきたいと思います。
同等以上のスペックで安いものを使えば良いので簡単です。 ただし、選ぶ部品によっては後々苦労することになりかねないので、十分に検討する必要があります。 ・生産終了が近い部品:市場での流通がなくなれば、別の部品に変更する必要があり、設計変更しなければならない。 ・スペックのバラツキが大きい部品:例えば、常温では問題ないが、低温になると急にスペックが悪くなるなど、一般的な環境では問題なくても特殊な環境下で問題が起きることがあります。 ・怪しい商社からの購入:最近は偽物のICや不良品が平然と売られていることがあるようです。 必ず信頼のできる商社から購入しましょう。
このうちの、基板実装についてお話しします。 量産製品になると、基板実装にかかる費用はほとんどが人件費・設備費です。 つまりできるだけ短時間で実装が完了するように工夫すればよいのです。 ・部品の表面実装化(SMD化) 従来のDIP部品(リードが付いた電子部品)に代わって、現在では表面実装部品が主流です。 表面実装部品の方が機械での実装に向いており短時間で実装が可能です。 ・できるだけ片面実装とする 基板サイズが許せば、部品を片面に全て実装した方がコストダウンになります。 片面実装にすれば、リフローが1回で済みますので、大幅な時間短縮となります。 また、メタルマスクも片面だけ製造すればよいことになります。 ・実装が簡単な部品を選ぶ 基板サイズが許せば、BGAやQFNなど実装の難易度が高い部品を避ける方が無難です。 最終検査の重点箇所になりますので、検査時間が長くなることがあります。 また、製造の歩留まりが下がることは、結局組付け費に跳ね返ってきます。 ・機械実装に対応した荷姿の部品を選ぶ 機械実装に使用する部品はリール・トレイが基本です。 カットテープ品やバラ部品は、人が介入する必要があるため、費用が高くつきます。
その場合、製品単価(部品費、組付け費など)を犠牲にしてでも開発費を安くした方が賢明です。 自社で既に使っている回路や、信頼できるソース(データシートの推奨回路など)から流用することで、評価時間やトライアンドエラーの時間を短縮することができます。 また、オーバースペックともいえるような回路構成にすることも良い案かもしれません。 部品費・組付け費を上げて開発費を下げる、バランスの良い選択が必要です。
もちろんその逆もあります。 例えば、電圧比較回路を構成する場合、デジタル・アナログのどちらが良いでしょうか? マイコン内蔵のADCを使えば周辺部品が少なくなるけれど、16bitは必要だからマイコンをランクアップ… 実は、安価なコンパレータで実現できた、など、 要求されるスペックや周囲の回路構成によってアナログ回路、デジタル回路のどちらが適しているかが変わってきます。 アナログ回路、デジタル回路それぞれメリット・デメリットがありますが、先入観にとらわれずにそれぞれの回路を上手く利用することでコストダウンにつながることがあります。
例えば、スイッチのチャタリング処理はハードウェア、ソフトウェアのどちらでも対応可能です。 ソフトウェアで実現できればコストダウンになりますので、まずは先入観を捨てて、背反事項を1つ1つ潰して行けば課題が見えてきます。 (ハード開発、ソフト開発を1人で行っていれば特に問題ないですが、ソフト屋さんが別の場合はお仕事を増やすことになるので、事前のネゴは必須です。)
基板の見た目は悪くなりますが、基板上にモジュール基板を載せた方が安上がりになることがあります。 特に最近流行りのIOT製品においては、WIFIやBluetoothなどの電波回路を搭載することが多いですが、電波を送受信する製品を日本国内で使用する場合、「電波法」の対象となり、事前に認証試験を受けることが必須となります。 認証試験には一般に数十万円〜数百万円もの費用がかかります。 そこで、認証試験に合格しているWIFIモジュールやBluetoothモジュールをそのまま利用することで、この煩わしい試験が不要になることがあります。 ※電波法に関して、詳しくは総務省の窓口にお問い合わせください。
機能が少ないことのメリットは「使い勝手の良さ」や「シンプルなデザイン」ですが、同時にコストメリットも得られることが多いです。 技術者視点だけでなく消費者視点も取り入れるべく、一度市場調査を行ってみてはいかがでしょうか。
まずは基本的なところで、基板の層数が少ないほどコストが安くなります。 単純に4層から両面(2層)に変更するのは難しいですが、例えば基板サイズを少し大きくして層数を変更することはできることがあります。 そのほかは、製造する枚数・総面積(=基板単品面積×枚数)によって変わってくるので、分けて説明します。 ■試作や小ロット製造(総面積 小) 例: 100×100mm基板 10枚 全体の費用に対して、原材料費や実際の製造にかかるコストは小さいです。 フィルム代やデータ編集費、輸送費、事務費用など、いわゆる固定費が費用の大部分を占めます。 基板のサイズをできるだけ小さくすることで、フィルム代が安くなります。 また、複数の種類の基板を同時に製造する場合、それぞれ個別に製造するよりも1枚の基板に「異種面付け」した方が安くなります。 なお、小ロット製造の場合は固定費が大きいため、基板の製造枚数を変更しても全体のコストはさほど変わりません。 (例: 5枚 15,000円 → 10枚 16,000円) ■中ロット製造(総面積 中) 例: 100×100mm基板 100枚 原材料費や実際の製造にかかるコストの割合が大きくなってきます。 小さい基板の場合、数枚を1枚の基板に「同種面付け」した方が安くなることがあります。 毎月100枚製造など定期的な製造がある場合は、1回あたりの製造数を増やすことで単価を下げることができます。 毎月100枚製造 → 3ヶ月毎に300枚製造 という具合です。 設計変更時に在庫基板が無駄になるリスクがありますので、ある程度製造が安定してから実施される方が良いです。 ■大ロット製造(総面積 大) 例: 100×100mm基板 3,000枚 原材料費や実際の製造にかかるコストの割合が大きいため、基板のサイズが重要になってきます。 プリント基板製造においては、「ワークサイズ」という大きいサイズの基板パネルに複数の基板を並べて製造します。 ワークサイズは既定の大きさが何種類かありますが、このワークサイズ内に何枚の基板を並べられるかによって、単価が変わってきます。 つまり、同じワークサイズ内でも、より多くの枚数の基板を並べれば単価が安くなります。 基板の面付け数を調整してワークサイズでの取り数を調整する方法が簡単ですが、場合によっては正方形の基板を横長に変更したりと単品の形状を変更することもあります。 量産製品の開発の際は、初期段階でワークサイズを意識した方がよりスムーズにコストダウンが可能です。 また、ドリル・ルーター加工の工程も製造費に影響することがあります。 次のことを考慮することでコストダウンにつながります。 ・ドリル穴の数によって製造にかかる時間が変わるため、穴の数をできる限り減らす。 ・基板メーカーによっては0.3mm程度の小さい穴を開けるのに時間がかかることがあるので、できる限り大きいサイズのVIAを選ぶ。 ・ドリル刃切り替えの回数を減らすため、できる限りドリル径を統一する。 ・ルーター加工の幅(スリット等)は2mm以上とする。(1mmのルーター加工は時間がかかるため) 最後に、量産数量が多くなれば歩留まりも考慮する必要があります。 プリント基板のエッチング工程では、ごく稀に不良が発生します。 不良品は後の電気検査、外観検査で破棄されますが、製造にかかる費用が無駄になってしまうため、不良の発生確率に応じた費用が加算されることがあります。 主に不良が発生しやすいのは以下のような箇所ですので、これらをできるだけ減らすことでコストダウンにつながることがあります。 ・細いパターン(断線しやすい) ・パターン間隔が狭い(ショートしやすい) ・アニュラリングが小さい(スルーホールのメッキ形成に失敗しやすい) ・Vカットや外形付近にパターンがある(パターンが切断される可能性がある)
それぞれトレードオフの関係になっていることもあるので、「部品費を下げたら、製造費が上がった」などということも起こるでしょう。 製品の仕様や求められるものを鑑みて、トータルでバランスのよいコストダウンを実施する必要があります。
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