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AI向け基板とは何か?需要急増の裏にある層数・単価インフレを解説
本記事は、国内外の業界レポート・基板メーカー各社の公表情報・市場調査データをもとに、 2026年7月時点の情報を独自に整理・解説したものです。 1. そもそもAIサーバーにはどんな基板が使われているのか「AI向け基板の需要が急増していて、基板の価格も上がっている」という話をよく耳にするようになった。ただ、 そもそも「AI向け基板」とは具体的に何を指しているのか、意外とイメージが湧きにくいのではないだろうか。 AIサーバー1台の中には、実は性格の異なる複数の基板が組み合わさっている。まずはその内訳から見ていきたい。
この中で、近年もっとも劇的に姿を変えているのが「ICパッケージ基板」と「バックプレーン」の2つである。 2. 従来のサーバー基板はどうだったかAI特需が来る前の一般的なサーバーでは、CPUを中心とした比較的標準化された構成が主流だった。マザーボードには FR-4系の一般的なガラスエポキシ材料が広く使われており、通信機器やハイエンドサーバーの一部を除けば、 コスト・量産性・安定した歩留まりが重視される「枯れた」設計が中心だった。層数も、汎用サーバーであれば 数層〜十数層程度、ICパッケージ基板もチップの規模に見合った比較的シンプルな構成が一般的だった。 半導体パッケージ基板そのものの歴史を振り返ると、1993年頃から有機パッケージ基板(いわゆるFC-BGAの前身)が 採用され始め、クロック周波数の高速化・高周波化に対応する形で微細化が進んできた。とはいえ、その進化の ペースは緩やかで、数年単位でじわじわと配線ルールが細くなっていく、という程度の変化だった。 3. AI向けに何が変わったのか(1) バックプレーンの層数インフレ海外の業界レポートによれば、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)向けのAIサーバーでは、40〜60層の バックプレーンが仕様として求められるようになっている。75μm未満の微細なマイクロビア、レーザー穿孔による 積層ビア、液体冷却式コールドプレートからの熱を逃がす埋め込み型サーマルビアなど、従来の汎用サーバー基板には なかった技術要素が標準搭載になりつつある。 その結果、基板単価は従来のサーバーボードの50米ドル程度から、200米ドルを超える水準まで跳ね上がっている という報告もある。GPUクラスターに流れる大電力を管理する電圧レギュレータ・電力変換器・ゲートドライバ・ 電流センサといった高度な電力供給系統を、限られた面積の中で確実に配線する必要があることが、この層数インフレの 直接的な要因になっている。 (2) ICパッケージ基板(FC-BGA)の大型化・高多層化ICパッケージ基板の世界でも、同様のインフレが起きている。国内の基板メーカー各社の公表情報を見ると、 AIサーバー向けFC-BGA基板の大型化・高多層化に伴って、SAP(セミアディティブプロセス)という高精度な 製造工程の需要が供給能力を上回る見通しが示されている。ある国内メーカーは、100mmを超えるパッケージ基板 サイズや14段を超える多段ビルドアップへの対応を進めており、厚銅コアを含む多様な材料を使い分けることで、 機械特性の改善・高放熱・大電流対応を両立させようとしている。 こうした基板を作るには、ビルドアップ工法に使われる高機能絶縁フィルムのような高性能材料や、ガラスクロス、 低伝送損失材料、めっき薬品、精密なレーザードリルなど、基板メーカー1社では完結しない「実装のサプライチェーン」 全体の底上げが必要になる。国内では、パッケージ基板だけでなく、その上流にあたる材料・薬品・製造装置の分野でも 日系メーカーが強い存在感を持っている。
4. 需要はどれくらい増えているのか半導体パッケージ基板市場については、コロナ禍でのDX加速や5G導入をきっかけに、ハイエンドサーバー向けの 高性能CPUやAIアクセラレーター用パッケージ基板の需要が急拡大しているとされ、市場規模は年率10%前後の 二桁成長が見込まれ、2026年前後には市場規模が倍増して140億〜150億ドル規模に達するとの見方もある。 直近の実績値を見ると、この流れはすでに数字として表れている。パッケージ基板を構成する材料(銅張積層板・ ビルドアップフィルム・ソルダーレジストなど)の世界市場は、2023年こそ前年比95.6%とマイナス成長だったが、 2024年には前年比108.7%の約3,982億円まで回復し、2025年は前年比108.7%の約4,327億円に達する見込みと されている。この回復の主因として、「FC-BGA基板のコア厚膜化に伴う材料単価の上昇」と「AIアクセラレーター 需要の増加に伴うFC-BGA基板向け材料の拡大」が挙げられており、2025年以降も年率8〜10%程度の成長が 続くと見込まれている。 高機能絶縁フィルムを使ったビルドアップ基板(FC-BGAの主要材料)に絞って見ても、2023年時点で ハイパフォーマンスコンピューティング向けプロセッサの70%以上がこの方式のFC-BGAで構成されており、 AIチップの世界出荷数が2023年に4,500万個に達したことに伴って、このフィルム材料の需要は前年比23%増加 したというデータもある。これを受けて、主要メーカー各社は生産能力を15%積み増す対応を取っている。 実際の設備投資の動きを見ても、この勢いは裏付けられる。国内のFC-BGA基板メーカーは新規ラインの稼働や 生産能力の倍増計画を相次いで発表しており、絶縁材フィルムを手がけるメーカーも、AIサーバー需要を背景に 数年単位で生産能力を倍近くまで拡大する計画を示している。かつては「CPU向けの一部の高付加価値品」だった 領域が、AIサーバーというひとつの巨大な用途によって、業界全体の投資判断を左右する規模にまで成長した 格好である。 5. なぜそんなに"高く"なるのか(技術的な理由)
つまり、AIサーバー向け基板の値上がりは単なる「品薄による便乗値上げ」ではなく、要求される技術水準そのものが 従来の汎用サーバー基板とは別次元に引き上げられたことの裏返しだと言える。 6. 層数・単価で比べてみるといまの基板の需要としては、2層〜4層程度で線幅・間隔も標準的なルールに収まる構成がだいたいメインだろう。 それに対してAIサーバー向けのバックプレーンは40〜60層、ICパッケージ基板は14段を超える多段ビルドアップと、 層数だけ見ても一桁以上の差がある。基板単価で見ても、数百円〜数千円のレンジが中心的な世界がある一方、 AIサーバー向けバックプレーンは1枚200米ドル超という水準まで来ており、同じ「プリント基板」という 言葉でくくるのが難しいほど条件が離れている。 ただし、こうした最先端基板で磨かれた技術(微細配線、レーザードリル、低損失材料など)は、時間差を伴いながら 降りてくることが多い。AIサーバー向けの技術革新が、数年後にはHDI基板の低価格化や、 小ロット基板でも使いやすい高性能材料の普及という形で還元されてくる可能性もある。 7. まとめAIサーバー向け基板の需要拡大は、一過性のブームでは終わらなそうだ。 半導体製造装置市場は2025年の1,330億ドルから2027年に過去最高の1,560億ドルへ拡大する見通しで、 HBMなどメモリ関連投資も2027年まで大幅な伸びが続くとされている。 パッケージ基板側でも、ガラス基板やチップレット・2.5D/3D集積といった次世代技術の市場調査が2030年代半ばまでのスパンで組まれており、 業界としては数年単位の構造的な成長局面として捉えている。 層数インフレとそれに伴う単価上昇も、今後しばらくは続くと見ておいたほうがよさそうだ。
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